遺族年金には大きく分けて『遺族基礎年金』と『遺族厚生年金』の二つの種類があります。
- 遺族厚生年金(国民年金):自営業者や農漁業者、フリーター、学生、無職の方などが加入
- 遺族厚生年金(厚生年金):会社員の方が加入
※かつて、公務員などを対象とした『共済年金』がありましたが2015年10月から厚生年金に一本化されました。
厚生年金は『会社が半額負担』『年金の上乗せあり』などとメリットが大きいのですが、会社員しか加入することができません。
つまり、脱サラして自営業者などになると国民年金に切り替わってしまいます。
では・・・そこまで払ってきた厚生年金は無駄になってしまうのか?というのが今回のお話です。
結論から言えば、脱サラしても厚生年金+国民年金で25年以上の加入があれば遺族厚生年金を受給できます。
それ以前(全額納付していたとして45歳未満)に死亡してしまうと、遺族基礎年金しか受給することができません。
そもそもの遺族年金の仕組みについては以下の記事を参考にしてください。
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遺族厚生年金を受給するための条件
遺族厚生年金を受給するための前提条件は以下の4つのいずれか。
- 被保険者が死亡したとき(※)
- 被保険者期間中の傷病がもとで初診から5年以内に死亡したとき(※)
- 老齢厚生年金の受給資格が25年以上ある者が死亡したとき
- 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき
※年金加入期間中、保険料を2/3以上納付していることが条件
厚生年金から国民年金に切り替わった後でも遺族年金を受けられるのは2,3のパターンです。
2は比較的レアケースなので、この記事での本題は3についてです。
被保険者期間中の傷病がもとで初診から5年以内に死亡したとき
まずは、2番の『厚生年金加入中(会社員の間)に病気や怪我にかかり、退職後に死亡した』ケースです。
このケースのポイントは
- その病気の初診が厚生年金加入中
- 死亡の原因がその病気や怪我
- 初診から死亡まで5年以内
という点です。
イラストでは『自営業』としていますが、病気の療養のために退職(無職)、その後死亡というケースも含まれます。
加入期間は問わないので、極端な例では就職直後に病気に掛かり、その後退職・死亡した場合も受給することができます。
このケースでは、厚生年金の加入期間が25年未満だった場合には25年加入していたものとして受給額が計算されます。
一方で、以下のようなケースでは受給することができません。
受給できないケース
- 死亡の原因が、退職後にかかった病気や怪我
- 初診から5年以上経過している
これらの場合に遺族厚生年金を受給するには、次の項目で挙げる『老齢厚生年金の受給資格が25年以上』を満たしていなくてはいけません。
老齢厚生年金の受給資格が25年以上ある者が死亡したとき
今回のテーマは、こちらが本題です。
- 転職後に死亡
- 死亡の原因は厚生年金加入中のものではない、または初診から5年以上経過
この場合には先程の条件に該当しませんので、遺族厚生年金を受給するには『老齢基礎年金の受給資格が25年以上ある』必要があります。
受給資格が25年以上とは
- 国民年金の加入期間及び免除期間
- 厚生年金の加入期間及び免除期間
の合計が25年以上であること。未納期間は含まない。
つまり、保険料の滞納等がない場合は45歳以上で死亡した場合に遺族厚生年金が受け取れるということです。
それ以前の場合には残念ながら遺族厚生年金は受け取れません。
そのため、40歳未満の自営業の方が死亡保障を考える場合は、遺族厚生年金は受け取れないものと考えておいた方が賢明です。
(45歳以降に死亡する場合も充分考えられますが、それ以前に万が一のことがあると大きく計算が狂うため。)
ただし、受給額は厚生年金加入分のみ
極端な例で言えば厚生年金1年・国民年金24年の加入であっても、遺族厚生年金を受け取ることができます。
ただし、金額は厚生年金加入期間分=1年分だけです。
『厚生年金加入中に死亡した』場合や、『被保険者期間中の傷病がもとで初診から5年以内に死亡』の場合には最低25年分受給することができますが、それ以外の場合には払った分しか貰えません。
- 国民年金・厚生年金合計で25年以上加入していれば受給可能
- ただし、受給できる金額は厚生年金加入期間分のみ
年収500万円の場合、具体的にどのくらいの金額かというと・・・
年金額の目安
- 加入期間1年:年額約2万円
- 加入期間5年:年額約10万円
- 加入期間10年:年額約20万円
- 加入期間15年:年額約31万円
- 加入期間20年:年額約41万円
- 加入期間30年:年額約62万円
この程度です。
つまり会社員期間が短く早々に独立した方の場合には、遺族厚生年金はほとんど期待できないということになります。
まとめ
- 『会社員時代の傷病が原因で、5年以内に死亡した場合』は遺族厚生年金もしっかり貰える
- そうでない場合は、国民年金と合わせて25年以上の加入期間が必要
- 合計25年以上だと受給できるが、金額は厚生年金加入期間分のみ
自営業などの方は、遺族厚生年金はあまり貰えないと考えておいた方が良いでしょう。