死亡保障とは、生命保険の保障内容の一つです。
その名の通り『あなたが亡くなったら、いくらのお金が支払われるか』というもの。
では、ここでお聞きします。
『死亡保障、いくら入ってますか?』
- 入ってない
- 3000万円
- 1憶円
年齢や家族構成、資産状況によって変わって当然ですので、ここに正解はありません。
二つ目の質問です。
『その金額の根拠を説明できますか?』
死亡保障とは、いわばあなたの命の対価です。
それなのに金額の根拠を理解し、説明できる人はほとんどいません。
一つ目の質問、『死亡保障にいくら入っているか』を答えられない人も多いのではないでしょうか。
そもそも、死亡保障っていくら必要なんでしょう。
『死んだ時のことなんて縁起でもない・・・』と目を背ける方もいますが、万が一の時に『全然足りない!』なんてことになったら冗談じゃ済まされません。
困るのはあなたではなく、あなたの家族です。
万が一のことなんて起きて欲しくないからこそ、しっかり考えておくべき問題なのです。
この記事では、死亡保障の必要額と考え方についてまとめていきます。
死亡保障の目的は『残された家族の生活を守る』こと
そもそも、何の為に死亡保障に入っているのでしょうか。
死んで得する為?
そんな訳ないですよね。
死亡保障の目的は『自分が死んだ後、残された家族が困らず生活できるようにすること』です。
だから、3000万とか1億とか、ざっと計算するのではダメなんです。
『遺族が生活していくにはいくら必要か』という考えに基いて、必要な保障額を計算していきましょう。
死亡保障額の考え方
死亡保障の必要額を考える上では『自分が死んだ後に必要なお金』と『自分が死んだ後の収入』を見比べて、不足する部分を補うのが原則です。
必要保障額 = 『自分が死んだ後に必要なお金』 - 『自分が死んだ後の収入』
更に貯蓄額を差し引いて考えることも出来ますが、不測の事態に備える為に貯蓄は別に考えておいた方が良いでしょう。
自分が死んだ後に必要なお金
- 葬儀代
- 日々の生活費
- 子供の学費
- 家の修繕費
- 車の買い替え
- 老後の医療費などの蓄え
こういったものが自分の死後に必要なお金になってきます。
独身の方の場合、その後の生活費や子供の学費の心配はない・・・つまり、基本的に葬儀代だけで事足ります。
一方で、家族、特に子供がいる場合にはその後の生活費について考える必要があります。
具体的な計算については後述しますが、一般的に配偶者の死後の生活費は
- 子供が在学中:現在の生活費の70%
- 子供が独立後:現在の生活費の50%
がおよその目安とされています。
これに学費などの大きな出費を加えたものが『自分が死んだ後に必要なお金』です。
自分が死んだ後の収入
- 配偶者の給与
- 遺族年金
上記の収入と『自分が死んだ後に必要なお金』を見比べて、足りない部分を生命保険で補う必要があります。
遺族年金についての詳細は割愛しますが、一般的な会社員(年収400万円前後)が死亡した場合の遺族年金の目安は以下のようになります。
遺族年金の目安(年収400万円)
- 子供一人:月額約12万円
- 子供二人:月額約14万円
- 子供三人:月額約15万円
モデルケース:死亡保障の必要額を考える
ここでは、以下のケースで夫が亡くなった場合の死亡保障の必要額を計算していきます。
モデルケース
- 夫:35歳、年収500万円
- 妻:35歳、専業主婦
- 第一子:5歳
- 第二子:2歳
持家(住宅ローン)。
子供が3歳になったら妻はパートに出る予定。
家計の状況は以下の通り。
手取り:30万円
住居費:9万円
食費:4万円
水道光熱費、通信費:2万円
自動車ローン、ガソリン代:3万円
保険料:1万円
雑費:2万円
小遣い:夫婦各3万円
貯蓄:3万円
夫の死後の生活費
- 住宅ローン(7万円)が免除
- 管理費・修繕積立金(2万円)はその後も必要
- 国民年金、国民健康保険料(約3万円)
- 夫の小遣いが不要に
- 貯蓄額は据え置き
これらを計算すると、月々の生活費は23万円必要になってきます。
年間276万円、10年で2760万円、20年で5520万円・・・
将来予定される出費
- 子供の学費、習い事
- 車検代、整備費
- 10年に一度、車を買い替える
- 水回りなどのリフォーム(20年後)
※車は状態の良い中古車を買うものとする
月々の出費に加えて、これだけの費用が掛かることが見込まれます。
小学校~大学卒業まで、一人およそ860万円必要です。(高校まで公立、大学私立文系)
夫の死後の収入
- 遺族年金
- 妻のパート代
子供が二人とも18歳未満の場合、遺族年金は月額約14.5万円。
妻がパートで8万円の収入を得たとすると合計22.5万円。(時給1,000円×5時間×週4日×4週間)
必要な生活費は23万円なので何とか生活できそうに思えますが、子供の学費や習い事などの『将来予定される出費』が全く賄えません。
また、子供が18歳を超えると遺族年金の額は減少します。
二人とも独立した後の年金額は月額7万円弱。(65歳以降は8.5万円)
これではとても生活できません。
死後のトータル収支を計算すると・・・
上記の収支を計算していくと、女性の平均寿命である87歳を迎えるまでに・・・
- 支出の総額は1憶6916万円
- 収入の総額は9696万円
なんと、不足するトータルの額はなんと約7000万円。
つまり夫の死後も同じ水準の生活をしていくには7000万円もの死亡保障が必要なのです。
どうですか?思ってたよりも高額じゃありませんか?
細かい計算はこちら。
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生活水準を変えれば必要額は引き下げられる
7000万円というのはあくまでも今と全く同じ(当初思い描いていた)水準の生活を維持した場合。
夫が亡くなったことで、生活を見直す要素はいくつかあります。
- 車を手放す
- 持家を貸しだし、一回り狭い賃貸に引っ越す
- 子供の独立後、更に一回り狭い賃貸へ
- 賃貸に引っ越したので、リフォーム代を削除
このような点を見直せば、必要額は3000万円くらいまで圧縮できます。
また、妻がフルタイムに近い水準で働けば1000万円ほどでOK。
ただし、これはあくまで『下げることができる』という話です。
『何とか生活できればそれで良い』というのも一つ。
『生活に困らないだけのお金を残してあげたい。時間を子供の為に使ってほしい』というのも一つ。
そこに正解はなくて、最終的にはそれぞれの考えによって必要な保障額というのは違ってくるのです。
まとめ
- 死亡保障の基本は『必要保障額 = 死後に必要なお金 - 死後の収入』
- 子供二人の会社員世帯でも、7000万円という金額が必要になることも
- ただし、その後の生活についての考え方によって必要額は大きく変わってくる
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