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医療保険(入院保障)は本当に必要なのか|公的保障制度と合わせて徹底解説

投稿日:2018年10月24日 更新日:

生命保険の代表的な保障内容として、『入院保障』があります。

  • 入院したら一日○○円
  • 手術を受けたら一回○万円

といった保障内容のものです。

老後のことを考えると心配になってくるところですが、入院保障は支払う保険料も高くなりがち。

特に40代以降に加入しようとすると、月々1万円を超えることも珍しくありません。

 

この記事ではそんな入院保障について『果たして入院保障は必要なのか』という点について解説をしていきます。

結論から言うと・・・

入院に備えるならば保険よりも数十万円程度の貯蓄の方が必要。

その貯蓄もない、出したら生活が苦しい、という方は少額の掛け捨て保険を。

 

そもそもの大前提:保険は損をするように出来ている

入院保障に限らず、保険というのは病気になる確率と貰える保険金を掛け合わせて『期待値』を考えると、必ずマイナスになるようにできています。

というのも、私たちが支払う保険料の3割~5割程度が手数料になっているからです。

ネット保険で有名なライフネット生命は手数料の割合を開示していますが、概ね30~40%程度が手数料です。

参考:ライフネット生命-保険料の内訳

 

窓口を持たず、コストカットに積極的な会社でさえこの水準。

大手保険会社では手数料率が50%を超えることも珍しくありません。

事実、僕が以前に勤務していた保険会社では50%超えの商品が複数ありました。

 

例えば『100人に1人が入院し、入院すると10万円の保険金が支払われる』という条件があったとします。

確率は1%、保険金は10万円ですから、1人あたり1,000円負担すれば良い計算になります。

しかし実際には保険会社の手数料が上乗せされ、保険料は1,500円~2,000円ほどになるケースがほとんどです。

よって、『保険に入ると得か損か』という議論については『期待値的に損』で一蹴されてしまいます。

この記事では『期待値がマイナスであっても医療保険に入る価値はあるのか』という観点で考えていきたいと思います。

 

何の為に医療保険に入るのか?

入る価値があるかないか・・・そもそも、何故医療保険に入るのでしょうか。

これは死亡保障と同じ考え方なのですが、『入院によって自分と家族の生活が困窮することを防ぐ』ためです。

  • 入院をして、高額な医療費が払えない!
  • 入院中の給料が出ないから、生活ができない!

こんな状況にならない為に医療保険は存在する訳です。

つまり、医療保険の加入によってこれらの状況を防げるかがポイントになってきます。

 

入院はどんどん短期化している

昨今、長期入院させるよりもなるべく早く退院させ、通院治療に切替えるという傾向があります。

1990年(平成2年)の平均入院日数は44.9日でしたが、2014年(平成26年)には31.9日まで短くなっています。

出典:厚生労働省-平成26年(2014)患者調査の概況

つまり、同じ病気を治療するにしても『入院保障』の支払い対象となる期間が短くなり、恩恵が薄くなっているのです。

病院も商売なので、回転率を上げた方が利益が出るのです。

 

長期入院をするのは高齢者

また、年齢による入院期間の差も顕著です。

15~34歳の平均入院日数が12.0日なのに対し、75歳以上は47.6日。

先ほどの平均入院日数というのは高齢者が数値を引き上げている訳です。

出典:同、厚生労働省-平成26年(2014)患者調査の概況

 

これが何を意味するかと言うと、医療保険の恩恵を受けられるのは高齢者になってからだということ。

しかし高齢になってから医療保険に入るのは困難です。

30歳の時に月々5,000円の医療保険に入ると、65歳までに200万円以上支払うことになります。

  • 若い頃:入院の可能性も低く、しても短期なので恩恵が薄い
  • 高齢期:入院の可能性もあり、やや長期化するが、それ以上に保険料を払っている

という図式が出来上がり、この点から『医療保険に入るならその分貯蓄・運用しておく方が合理的である』と言えます。

若い内に入って老後のために・・・というのは、それこそ払い負けする可能性が高いです。

 

知っておきたい二つの制度

入院保障の必要性を考える上で、知っておきたい制度が二つあります。

『高額療養費制度』と『傷病手当金』。どちらも健康保険の中の制度です。

  • 高額療養費制度:1ヶ月の医療費に上限が適用される
  • 傷病手当金:病気や怪我が原因で働けなくなると、給与の約2/3がもらえる

 

高額療養費制度とは

簡単に言うと、1ヶ月の中で自己負担する医療費の上限のことです。

年収等による細かい条件は割愛しますが、一般的な会社員(※)が1ヶ月に負担する医療費は約8万円強となっています。

大きな手術を受けても、高額な薬を飲んでも、それが健康保険適用のものであれば負担額は8万円ちょっとで事足ります。

※年収約370~770万円、69歳以下の場合。正確には80,100円 +(10割負担額 - 267,000円)× 1%

ただし、これはあくまで『健康保険の適用範囲になる部分』についての話ですので、実費負担となるものは別途負担が必要です。

  • 食事代
  • 寝具などのクリーニング代

こういったものは健康保険が適用されません。

また、新聞・雑誌・本など入院中の身の回りのものも少なからずお金が掛かります。

これらを総合すると、1ヶ月丸々入院すると10~15万円程度の負担があると思っておいた方が良いでしょう。

 

ただし、この制度における1ヶ月とは、カレンダー上での1日から末日まで

つまり、15日に入院して翌14日に退院した場合には

  • 15日~末日分:約8万円が上限
  • 翌月1日~15日分:約8万円が上限

とそれぞれ計算され、食事代などを含めて合計20万円ほどの負担になる可能性がありますので注意が必要です。

緊急ではない計画的な入院・手術であれば、なるべく上旬に入院することで負担を軽減できるかもしれません。

もっとも、病院側の都合や症状の兼ね合いなどでそうも言ってられないケースが多いですが。

 

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傷病手当金とは

病気やケガで働けなくなり、その間給与の支払いがない場合に最長1年6ヶ月の間、給与の約2/3相当額が支払われる制度です。

ボーナスに相当するものはなく、純粋に月給部分(標準報酬月額が基準)のみです。

この制度のポイントは、病気やケガを理由に仕事を退職しても継続して受給できるという点。

例えば病気で休職し、6ヶ月後に復職を諦めて退職した場合であっても、継続して就業不能な場合にはその後1年間支給されます。

 

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『病気になって、仕事を退職することになった。』 『ケガをして休職したが、その間は無給。』   こんな時、健康保 ...

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モデルケース:長期療養した時に掛かる費用

例えば、こんな家庭を例に考えてみましょう。

モデルケース

  • 夫:月の手取り25万円
  • 妻:月の手取り8万円(パート)
  • 毎月の生活費:25万円

この時『夫が病気で1ヶ月間入院、その後2ヶ月通院し、更に半年間自宅で療養した』らどうなるでしょうか。

  • 通院期間も投薬などで治療費がかさむものとする
  • 入院~療養期間は、飲み会や趣味の出費が毎月2万円減るものとする
  • 健康保険料の負担増減はプラスマイナスゼロとして無視する

このような条件で考えて行きます。

 

まず、治療費は入院・通院共に高額療養費制度の適用となりますので、各月の上限が8~9万円程度。

入院中は雑費や食費等を含めて15万円、通院中は各月8万円掛かったとします。

すると医療費の合計は31万円

 

傷病手当金は手取りではなく給与の総額(標準報酬月額)を基準に計算しますので、手取り25万円の場合の傷病手当金は約20万円になります。

 

これを元に9ヶ月間の収支を計算すると・・・

  • 給与:-225万円(-25万円×9ヶ月)
  • 治療費:-31万円(入院中10万円、通院中8万円×2ヶ月)
  • 出費減:+18万円(2万円×9ヶ月)
  • 傷病手当金:+180万円(20万円×9ヶ月)

出費256万円・収入198万円となり、差引58万円のマイナス

どうですか?

『9ヶ月間も仕事を休んだ割には、意外と少ないな~』と思うのではないでしょうか。

 

ちなみに、療養がもっと長かった場合は・・・

  • 療養が9ヶ月(合計1年):67万円
  • 最長の1年3ヶ月(合計1年6ヶ月):85万円

のマイナス収支となります。

 

結局、ある程度の貯蓄は必要

上記のモデルケースでは58万円の支出がありました。

仮に入院日額1万円の医療保険に加入していたとしても、入院日数自体は30日。

受け取ることのできる保険金は30万円で、結局全てを賄うことはできません。

不足分の28万円は生活を切り詰めるか、貯蓄で賄うしかないのです。

 

また、入院保険金が振り込まれるのは退院してから早くて2週間程度。

結局は立替払いになるので、『保険があれば貯金は要らない!』という訳にはいきません。

 

それでも入院保障に入るべき人

ここまで説明してきたように、入院保障はあまりメリットの大きい保険とは言えません。

しかし、それでも入院保障に入るべき人はいます。

数十万円の出費によって生活が成り立たなくなってしまう人です。

とりあえず治療費は払えたけど、来月の生活が厳しい・・・

親から借りれたけど、返す目途が立っていない・・・

このような人・・・言葉を選ばずに言うと、お金がない人ほど保険に入るべきです。

ギリギリで生活している時にダメージを追うと、本当に再起不能になってしまいます。

 

ただし、高額な保険に加入する必要はありません。

掛け捨ての保険で最低限の備えをして、その間に数十万円の貯金をすることが重要です。

 

まとめ

  • 入院は短期化し、長期入院をするのは高齢者
  • 高額療養費・傷病手当金など、公的制度は手厚い
  • ただし、それでもまとまったお金は必要
  • 咄嗟に支払える貯蓄が不安なら、掛け捨ての安い保険を

ただ、入退院を繰り返して医療保険の恩恵を最大限受けている人がいるのも事実です。

確率的には低いかもしれませんが、医療保険が全く不要だと言うのはちょっと乱暴というか、保険の理念を踏みにじっているように思います。

自分にとって必要かどうか、しっかりとした根拠を元に判断して頂ければ幸いです。

 

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